レコードに親しんでいない方の中には、レコードの状態の見方がよくわからない、というかたも多いことと思います。
なんとなく見た感じ、状態は良さそうだと思ったり、これは買取価格にはあまり影響しないだろうと思っていたら大幅な減額になりショック! なんてこともあります。
本稿では、レコードの状態について、写真も交えながらお話ししたいと思います。
盤の状態
レコードの心臓部である「盤」。わかりやすいものから、ぱっと見ただけではわからないものまで、種々の要素があります。
キズ
一番わかりやすいのは「キズ」でしょう。CDは多少のキズがあっても問題なく再生できることが多いですが、レコードは盤面の溝とプレーヤーの針との物理接触で音を出しますから、キズのあるなしは非常に重要です。
特に、溝と直行する形でキズがあると、レコードが1回転するたびに針がその上を通り、周期的なノイズが発生します。これを周回ノイズと呼び、LPであれば2秒弱で1回、シングル盤であれば1.3秒に1回ノイズが入ります。こんな状態で音楽を聴くのはかなりストレスフルですね。
さらに、キズがあまりに大きいと、針が溝をトレースできなくなります。これを針飛びといい、もはや音楽を聴くどころの話ではなくなります。
反り
レコードが曲がってしまった状態です。色々ありますが、よく見かけるのは以下の2つです。
1つはプレーヤーに乗せたときに波打ってしまうもので、程度がひどいとやはり針飛びを起こし、再生不能になります。
もう1つはレコードの中心部分が凹む/出っ張って、押すとポコポコなるもので、すり鉢状になる、というような表現をします。ひどい場合はやはり再生不能になります。
こういった反りの原因は、たいてい保管方法にあります。斜めに立てかけたままだったり、大量のレコードを平積みにして放置しておくと、レコードの重みで反ってしまいます。しかも反りを完全に治す方法は現在のところありません。一度曲がってしまうと、元の状態には戻せないのです。
レコードの保管は基本、本棚に本を入れるように縦置きにして、左右にふらつかないようにすることです。すぐにではないけれどレコードを売る予定があるという方は一度確認してみましょう。
塩ビヤケ
レコードの素材である塩化ビニールが化学反応を起こした状態です。表面が曇ったり、水紋のような跡ができたりと、見た目も悪くなり、多くの場合には音にも影響が出ます。
カビ
レコードに限らず、日本に住んでいると誰もが悩まされたことのあるカビ。多くの場合、ジャケットと盤の両方がダメージを受けています。溝の奥にこびりついたカビはノイズの原因にもなり、見た目にはきれいにできてもパチパチとノイズが出てしまうこともあります。
その他
指紋・・・音溝のところに時折見かけます。カビの遠因にもなります。
レーベル面への書き込み・・・レコードの真ん中の、ラベルが貼ってあるところをレーベル面といいます。曲目やクレジットなどの情報が記載されていますが、ここに書き込みがあることがあります。
ジャケットの状態
盤自体と並んで重要なレコードジャケット。コレクター要素の強いレコードは、ジャケットの状態も重要です。
底抜け
レコードジャケットの底が裂け、盤の端がこんにちはしてしまう状態です。発展するとジャケットが完全に裂け、盤がすぽっと抜けてしまいます。ちなみに、底抜けの亜種には「天抜け」「背割れ」があります。
底抜けの一番の原因は粗雑な扱いにあります。レコード屋さんでは上が開いた箱にレコードを並べていることが多く、お客さんは1枚1枚レコードをめくるようにして見ていきます。この時、レコードを持ち上げては落とすという人もいます。そのたびに盤の端がジャケット内にぶつかり、やがてはジャケットの底が抜けてしまうのです。
リングウェア
ジャケットに、レコードの丸い形の跡が付いてしまう状態です。これがあるといかにもレコードだなあという感じで風情もありますが、買取時には減額ポイントです。
リングウェアは、レコードの出し入れ時のこすれが原因です。印刷がはげてしまったり、他のレコードの印刷が付着するわけです。これを防ぐには、レコードを1枚1枚ビニールカバーに入れ、無理に詰め込みすぎないよう注意する必要があります。
カット盤
中古レコードで、ジャケットの端に切り欠きがあるのを目にしたことがあるかもしれません。これはレコードを電車の切符代わりにして、車掌さんがハサミを入れたからで……というのは嘘で、この切り欠きは「売れなかったから処分した品です」という目印です。
新品のレコードはお店に暫く並んでいますが、ずっと売れないものはメーカーに返送され、処分されます。この時、転売してやろうという不届き者が出ないよう、ジャケットに意図的にダメージを与えるのです。これがカット盤です。
切り欠きの他にも、ドリルで穴を開けたりします。シングル盤などジャケットがない場合、レーベル面に穴が開いていたり、またCDでプラケースごと穴を開けられていたりします。
その他
汚れ、カビ、ヤケ・・・一目瞭然ですね。
破れ、スレ・・・古い物でよく見ます。
指紋・・・艶消しのジャケットだと、脂性の人が触って指紋がくっきり残ることも。
落書き、書き込み・・・子どもがクレヨンで書いたようなほほえましいものから、感想や所有者のサインを書いているようなものまでいろいろあります。また歌詞カードにギターのコードが書き込んでいることもあり、何十年も前に耳コピをしていた若きミュージシャンに思いをはせてしまうことも。…とはいえこれらはすべて減額ポイントです。
その他の状態
その他、帯やライナー、付属品の状態です。基本的にはジャケットの状態「その他」の部分が当てはまりますが、以下のように特殊な場合もあります。
補充票(帯)
書店に並んでいる本には栞のような紙が挟んであります。これはどの本がどのくらい売れて、どれをどのくらい発注するか管理するためのもので、補充カードといいます。POS管理前の方法の名残ですね。
レコードにも同じようなものがあり、帯の裏に切り取り線付きの補充票が付いていることがあります。レア盤の場合、これが残っているかどうかが重要になることがあります。
最後に
今回はレコードの状態について少し詳しくお話ししました。レコード愛好家にとってはどれも重要で、お店によってはこれらの状態を表記する略号を羅列しているところもあります。
したがって買取の時にも、状態は重要な要素となります修復不能なものもありますが、保管方法など注意すれば劣化を防ぐことができる場合もあります。これからレコードを売ろうという方は参考にしてみてください。