ジャズの歴史そのものであり、帝王として君臨し続けたトランペッター、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)。
しかし、マイルス・デイヴィスのディスコグラフィはあまりにも膨大で、かつ同じアルバムでも
- 「ラベルの違い」
- 「住所表記の違い」
- 「モノラルとステレオの違い」
によって、その価値は天と地ほど異なります。
例えば、ジャズ史上最高の名盤『Kind of Blue』。
1959年にプレスされたオリジナル盤(初期プレス)なら、状態が良ければ数万円〜十数万円の値がつきます。
一方で、1970年代の再発盤であれば数千円、近年の重量盤リイシューなら2,000円前後です。ジャケットのデザインは全く同じでも、そこにはコレクターにしか分からない「決定的な違い」と、10倍以上の価格差が存在するのです。
- 「実家のレコード棚にマイルスのレコードがたくさんある」
- 「『Kind of Blue』を持っているが、これが高いやつなのか分からない」
- 「プレスティッジの黄色いラベルがあるが、住所の見方が分からない」
この記事では、年間数万枚のレコードを査定する買取のプロが、マイルス・デイヴィスのレコードがなぜ世界中で求められているのか、その背景から、レーベルごと(Prestige, Columbia)のオリジナル盤の識別方法、日本盤の「帯」の価値まで、どこよりも詳しく徹底的に解説します。
これを読めば、あなたの手元にあるマイルス・デイヴィスのレコードの「本当の価値」が判明するはずです。
「帝王」マイルス・デイヴィスのレコードはなぜ高い?
アメリカ・イリノイ州生まれ。ビバップ、クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、エレクトリック・ジャズ(フュージョン)と、時代の節目ごとにジャズのスタイルを革新し続けた、20世紀音楽界の最重要人物です。
マイルスのレコードが高騰し続ける3つの理由
① ジャズ・レコード市場の「基準点」である
マイルスの作品、特に1950年代〜60年代のアルバムは、モダンジャズの教科書です。
これからジャズ・レコードを集めようとする人が最初に欲しがるのがマイルスであり、ベテランのコレクターが最終的に行き着くのもマイルスです。
圧倒的な需要に対し、半世紀以上前の「オリジナル盤」の現存数は減る一方であるため、価格は右肩上がりに上昇し続けています。
② オーディオマニアを唸らせる「録音の良さ」
マイルスのレコード、特にPrestige(プレスティッジ)とColumbia(コロムビア)時代の作品は、録音技術が極めて高いことで知られています。
ルディ・ヴァン・ゲルダー(Prestige時代)や、フレッド・プラウト(Columbia時代)といった名エンジニアが捉えたミュート・トランペットの繊細な響きは、CDやストリーミングでは完全に再現できません。
「当時の空気感」を再生できるオリジナル盤は、オーディオシステムにお金をかける層にとって、喉から手が出るほど欲しいアイテムなのです。
③ 「ジャケット・アート」としての価値
マイルスのアルバムは、ジャケットのデザイン性が非常に高いです。
妻であるフランシス・テイラーをモデルにした『Someday My Prince Will Come』や、横尾忠則氏が手掛けた『Agharta』など、飾っておくだけで絵になる作品が多く、インテリアとしての需要も高値の一因となっています。
【Prestige時代】マラソン・セッションとNYCラベルの真実

1951年から1956年にかけて在籍したPrestige(プレスティッジ)レーベル。
この時代のマイルスは、ジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズと共に「黄金のクインテット(第一期)」を結成し、ハード・バップの頂点を極めました。
伝説の「マラソン・セッション」4部作
1956年、メジャーレーベルであるコロムビアへの移籍が決まっていたマイルスは、プレスティッジとの契約枚数を消化するために、わずか2日間でアルバム4枚分の録音を行いました。
リハーサルなし、ワンテイクで次々と名演を記録したこのセッションは「マラソン・セッション」と呼ばれ、以下の4枚のアルバムとしてリリースされました。これらは全て高価買取の対象です。
『Cookin’』 (PRLP 7094)
人気No.1。「My Funny Valentine」収録。
- オリジナル盤の条件:
- ラベル: 黄色地に黒文字(Yellow / Black Label)。
- 住所表記: 「446 W. 50th ST., N.Y.C.」(通称:NYCラベル)。
- 刻印: RVG(手書きまたは刻印)。
『Relaxin’』 (PRLP 7129)
「If I Were A Bell」収録。リラックスした雰囲気が人気。
- オリジナル盤の条件: こちらもNYCラベルがオリジナル。状態が良いものは10万円クラスになることもあります。
『Workin’』 (PRLP 7166) & 『Steamin’』 (PRLP 7200)
この2枚は発売時期が遅れた(1959年以降)ため、オリジナル盤の多くは「NJラベル」です。
- NJラベルとは: 住所が「203 S. Washington Ave. Bergenfield, N.J.」になっているもの。
- 注意点: 『Workin’』に関しては、極少数ですが在庫処分で使われた「NYCラベル」が存在し、幻の激レア盤となっています。しかし基本的には、両作とも「NJラベル」がオリジナルとして扱われ、十分な高値がつきます。
初期の名盤『Walkin’』『Bags’ Groove』
- 『Walkin’』 (PRLP 7076): ワニのジャケットで有名。ハードバップの幕開けを告げた作品。
- 『Bags’ Groove』 (PRLP 7109): セロニアス・モンクとの「喧嘩セッション」の逸話で有名。 これらのオリジナル盤(NYCラベル)も、ジャズ・ファンなら必ず持っておきたいアイテムとして高額査定されます。
【Columbia時代・前期】『Kind of Blue』と6eyesラベル
1955年、大手コロムビアへ移籍。ここからマイルスは「モード・ジャズ」という新しい手法を開拓し、芸術性を高めていきます。
ジャズ史上最高額級!『Kind of Blue』 (CL 1355 / CS 8163)

1959年発売。説明不要の最高傑作ですが、このレコードの査定は非常に複雑です。
① 「6eyes(シックス・アイズ)」ラベル
コロムビアのオリジナル盤を見分ける最大のポイントは、ラベルにある「目(ロゴマーク)」の数です。
- 6eyes(1955〜1962年):
-
ラベルの左右に合計6つのロゴがあるタイプ。これがオリジナル盤の証です。
- 2eyes(1962〜1970年):
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ロゴが2つになったタイプ。再発盤ですが、初期の「Guaranteed High Fidelity」表記や「360 SOUND(黒文字)」表記があるものは、音質が良く人気があります。
② 「誤植(Misprint)」の価値
『Kind of Blue』の初期プレスには、有名なミスプリントがあります。
- ラベルの誤植:
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B面の曲順が「1. Flamenco Sketches / 2. All Blues」と逆に表記されている(実際はAll Bluesが1曲目)。
- ジャケットの誤植:
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裏面の曲目リストで、Julian “Cannonball” Adderleyの名前がミススペルされている。これらの誤植がある盤は、修正後の盤よりも圧倒的に希少価値が高く、買取価格が跳ね上がります。
③ 「モノラル」vs「ステレオ」
- モノラル盤(CL 1355):
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当時の主流。音が塊で飛んでくるような迫力があります。特に「6eyes・誤植あり・DG(深溝)」のモノラル盤は、至高の逸品です。
- ステレオ盤(CS 8163):
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音の広がりを楽しめます。「6eyes・ステレオ」も高額ですが、相場としてはモノラル盤の方が高い傾向にあります。
その他のColumbia初期名盤
- 『’Round About Midnight』 (CL 949): 移籍第1弾。6eyes・DGありがオリジナル。
- 『Milestones』 (CL 1193): モードへの挑戦。カッティングの鮮度が重要視されます。
- 『Someday My Prince Will Come』 (CL 1656 / CS 8456): ジャケット人気No.1。フランシス・テイラーの横顔が美しい美品ジャケットは高額査定です。
【Columbia時代・後期】エレクトリック・マイルスの再評価
1960年代後半から、マイルスはエレクトリック楽器を導入し、ロックやファンクの要素を取り入れ始めます。かつては賛否両論ありましたが、現在はクラブミュージックのルーツとして、若い世代を中心に相場が急騰しています。
『Bitches Brew(ビッチェズ・ブリュー)』 (GP 26)

1970年発売。ジャズとロックを融合させた問題作。
- オリジナル盤: ラベルの外周下部に、白文字で「360 SOUND STEREO」と表記されている通称「360サウンド」ラベルがオリジナルです。(※これ以降のプレスは文字が黒色や金色に変わります)
- 相場動向: プログレッシブ・ロックのファンや、Radioheadのトム・ヨークが影響を受けたことでロックファンからの需要も高く、美品は1万円以上で取引されることもあります。
『On The Corner(オン・ザ・コーナー)』 (KC 31906)

1972年発売。発売当時は「最も売れなかったアルバム」と酷評されましたが、現在では「ヒップホップやファンクの祖」として、DJたちから熱狂的に支持されています。
- ジャケット: カートゥーン調のジャケットアートも人気。
- 相場動向: ここ数年で最も値上がりしたマイルスのレコードの一つです。オリジナル盤は見つけたら即買いレベルのアイテムです。
『Agharta(アガルタ)』『Pangaea(パンゲア)』


1975年の大阪でのライブ録音。 日本独自企画(または日本先行発売)のアルバムであり、横尾忠則氏によるアートワークが世界的に評価されています。
特に「帯付きの日本初版」は、海外コレクターが日本へ買い付けに来るほどの人気アイテムです。
日本盤(Japanese Pressing)の知られざる価値
「マイルスはUS盤(輸入盤)じゃないとダメ」というのは過去の話です。
現在、マイルス・デイヴィスの日本盤は、その品質の高さと独自の仕様から、世界的なコレクターズアイテムとなっています。
① 「ペラジャケ」の日本コロムビア盤
1960年代、日本コロムビアから発売された初期の日本盤は、ジャケットが薄い紙で作られた「ペラジャケ(Flipback Cover)」仕様でした。
このペラジャケは、独特の光沢と手触りがあり、状態良く保存するのが非常に難しいものです。
そのため、シワや破れのない美品は希少価値が高く、USオリジナル盤とは違った魅力を持つヴィンテージ品として高値がつきます。
② 幻の「被せ帯(Cap Obi)」
1960年代〜70年代初頭の日本盤には、ジャケットの上部から被せるタイプの「被せ帯(キャップ帯)」が付いていました。
この帯は非常に破れやすく、紛失しやすいため、現存数が極めて少ないです。
『Kind of Blue』や『Milestones』などの被せ帯付き完品は、数十万円という驚愕の価格で取引されることもあります。
③ 「SOPC / SOPJ」品番の高音質
1970年代以降のCBSソニー盤(品番がSOPCやSOPJで始まるもの)は、世界最高水準のカッティング技術と、高品質なヴァージン・ビニールで作られています。
「ノイズが少なく、音がクリアで分離が良い」として、海外のオーディオファイル(音質マニア)から指名買いされることが増えています。
特に「シュリンク(外装フィルム)」や「ステッカー」が残っているものは高評価です。
マイルスのレコードを高く売るための「査定のポイント」
大切なコレクションを少しでも高く売るために、プロがチェックしているポイントをお教えします。
① ラベルの「住所」と「目」を確認する
ここまで解説した通り、マイルスのレコードはラベルが命です。
- Prestigeなら「NYC」か「NJ」か。
- Columbiaなら「6eyes」か「2eyes」か。 ここをご自身でチェックしておくだけで、そのレコードが大体どのくらいの価値なのか(数万円級か、数千円級か)の予想がつきます。
② 付属品(インナー・スリーブなど)
当時のレコードには、レコード会社ごとの広告が入った「カンパニースリーブ(内袋)」が付属していました。
例えば、Columbiaの6eyes時代なら、当時の広告が入った紙製の内袋があります。これが揃っていると「完品」として査定額がアップします。
③ 盤質のコンディション
ジャズ・レコードは、再生した時のノイズが査定に大きく響きます。深いキズ(針飛び)は減額対象ですが、薄いスレ程度なら、希少なオリジナル盤であれば高値がつきます。
絶対にやってはいけないのは、「汚れているからといって、アルコールや洗剤で拭くこと」です。盤面を痛め、価値をゼロにしてしまう恐れがあります。そのままの状態でお持ちください。
まとめ:マイルス・デイヴィスのレコードはTU-Fieldへ
マイルス・デイヴィスのレコードは、単なる音楽ソフトを超え、20世紀の芸術遺産としての側面を持っています。 特に円安の影響もあり、海外バイヤーからの需要が爆発している「今」が、もっとも高く売れるタイミングと言えます。
- 「実家に『Kind of Blue』の古そうなレコードがある」
- 「ジャケットに『446 W. 50th ST., N.Y.C.』という文字がある」
- 「帯の付いた日本盤をまとめて処分したい」
もし、そのようなレコードをお持ちでしたら、リサイクルショップではなく、ジャズの専門知識を持つTU-Fieldにお任せください。
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