当店はレコードを中心に、CDやカセット、オーディオまで音楽まわりを丸ごと預かっている買取屋です。カウンター越しに毎日いろんな音源を触っていると、「これは只者じゃないぞ」と背筋が伸びる一枚に出会うことがあります。その代表格が、今日お話しする「初期盤CD」。CDが日本に上陸したのは1982年、もう40年以上前の話になります。当時のCDは「レコードより音がクリアでノイズもないニューメディア」として売り出され、値段もプレーヤーもかなり高価でした。手を出せる人が限られていたぶん、生産数が少なく、今ではなかなか出てこない幻の一枚まで存在します。聴かなくなったCDを箱ごと処分に回す前に、少しだけこのコラムに付き合ってください。
店主からひとこと
正直に言うと、私も昔は「CDなんてどれも同じ音だろう」と思っていた口です。ところが同じアルバムの初期盤と再発を並べて聴き比べたとき、なんとも言えない生々しさに面食らいました。それ以来、CDの背表紙の品番をつい確認する癖がついてしまいました。職業病ですね。
そもそも「初期盤CD」ってどういう意味?
「初期盤」というのは、そのタイトルが最初に世に出たとき、いちばん早い時期にプレスされた一枚のことを指します。同じアルバムでも、売れれば売れるほど何度も刷り直されます。二回目、三回目と刷られたものは「再発(さいはつ)」や「リイシュー」と呼ばれ、初回プレスとは品番も帯も微妙に変わっていきます。この最初の一群が初期盤で、CDの世界では「旧規格(きゅうきかく)」という言い方もされます。今の規格になる前の、古い規格番号を持った盤という意味合いですね。
ここで大事なのは、初期盤かどうかは「発売年」だけでは決まらないという点です。ロングセラーのアルバムなら、初期盤が一枚あるそばで、同じジャケットの再発が何十年も刷られ続けています。パッと見はうり二つ。見分けるには、後でお話しする品番や帯、盤面の刻印といった細かいサインを一つずつ拾っていくことになります。当店の査定でも、まさにここを一枚ずつ確認しています。
初期盤CDの特徴
「初期盤」「旧規格」の名の通り、今の規格より前のつくりになっています。ここでは代表的なサインを4つ挙げていきます。お手元のCDを一枚、手に取りながら読んでみてください。
初期盤CDの特徴その①:定価が高い
今でこそCDは3,000円ほど、再発なら2,000円を切って買えますが、初期盤CDはデジタル録音の音源で3,800円、アナログ録音の音源で3,500円という値付けでした。当時レコードが2,000円ほどで買えたことを思うと、CDはちょっとした高級品だったわけです。おまけに1989年から消費税が導入されているので、ジャケットに刷られた定価が税込か税抜きかでも、おおよその発売時期の見当がつきます。定価表記は初期盤かどうかを見分ける、最初の手がかりになります。
初期盤CDの特徴その②:箱帯仕様
名前の通り、箱のような形でCDケースにすっぽりはめ込む帯です。これをはめたままだとケースが開けられないので、当時のリスナーは開封するときにビリッと破って捨ててしまいました。だからこそ、今きれいに残っている箱帯はコレクターがこぞって欲しがります。レコードと同じで、帯があるかないかで査定額はしっかり変わります。もし箱の隅から出てきたら、無理に伸ばそうとせず、そのまま丁寧に取っておいてください。
初期盤CDの特徴その③:シール帯
1980年代はいろんなタイプの帯が試されていて、このシール帯はケースに直接ペタッと貼る仕様でした。糊で貼ってあるぶん、はがそうとしてボロボロになったり、ケースごと替えられて失われたりで、当時のまま残っているものはなかなかお目にかかれません。これも残っていれば立派な付加価値です。無理にはがさず、貼られた状態のまま保管しておくのが正解です。
初期盤CDの特徴その④:38D、35D品番
品番の頭に付く38と35という数字は、さきほどの定価(38→3,800円、35→3,500円)をそのまま表しています。CDの背や裏、ディスクのレーベル面に必ず刷ってあるので、ここを見れば旧規格かどうかがかなりの精度でわかります。ちなみに邦楽で初めてCD化されたのは大瀧詠一「ア・ロング・バケイション」(品番:35DH-1)。この一枚から邦楽CDの歴史が始まったと思うと、なんだか背筋が伸びますね。
なぜ初期盤CDは「音がいい」と言われるのか
コレクターの間では、初期盤は「音がいい」と語られることが多いジャンルです。ただ、当店としては「初期盤なら絶対に音が上」と言い切るつもりはありません。作品や工場、聴く環境によって印象は変わりますから。そのうえで、なぜそう言われやすいのかを、店番のあいだに感じてきた範囲でお話しします。
当時のマスターに近い音が入っているとされる
初期盤には、そのアルバムがCD化された最初のマスター音源が使われていると言われます。年月が経って再発されるとき、音を今風に調整し直す「リマスター」がかけられることがあり、そこで音の質感が変わります。音圧を上げて派手に聞かせる方向に振られると、初期盤にあった余白や奥行きが薄く感じられる、という声をコレクターからよく聞きます。どちらが好みかは人それぞれですが、「最初に世に出た音をそのまま聴きたい」という層に、初期盤は根強く支持されています。
プレスされた工場が限られていた
CDが出はじめたころは、国内外でディスクをプレスできる工場そのものが限られていました。そのため初期のCDには、後の量産品とは違う独特の製造背景を持つものがあると言われています。マニアが盤面の刻印を虫めがねで追いかけるのは、こうした「どこで、いつ作られた一枚か」を突き止めたいから。真偽の細かいところは諸説あるので当店も断定はしませんが、少ない生産数と相まって、初期盤が特別扱いされる理由の一つになっています。
店主からひとこと
「音がいい」という話は、突き詰めるとオーディオ談義になって夜が明けます。当店としては、音の良し悪しよりも「その時代の空気がそのまま詰まった一枚」という点に価値を感じています。ジャケットの手ざわりも、帯の色あせ具合も含めて、初期盤はひとつの時代の記録なんです。
初期盤CDの見分け方|当店が査定で見るポイント
ここからは、当店が実際に一枚ずつ手に取って確認している見分け方を、順番に紹介します。ご自宅でもすぐ真似できるところばかりなので、気になる一枚があれば一緒に確認してみてください。
規格番号・品番を見る
いちばん確実なのが品番です。背表紙や裏ジャケ、ディスクのレーベル面に刷られたアルファベットと数字の並びを確認します。さきほどの35D・38Dのように、頭の数字が定価を表しているものは初期盤の可能性が高いサインです。同じアルバムでも再発のたびに品番が振り直されるので、この一列を読むだけで初回か何回目かの見当がつきます。当店ではまずここから見ています。
帯(箱帯・シール帯)を見る
次に帯です。箱帯やシール帯のような初期特有の形が残っていれば、それだけで初期盤らしさが一気に高まります。帯には品番や定価、キャッチコピーが刷られていることが多く、盤本体の情報と照らし合わせる材料にもなります。破れやすい・失われやすいパーツだからこそ、残っていること自体が価値。査定でも帯の有無は必ずチェックする項目です。
ケース・ブックレット・裏ジャケを見る
プラスチックケース(ジュエルケース)の形や、内側のトレイの色にも時代が出ます。初期は黒や濃いグレーのトレイが多く、後年の透明トレイとは雰囲気が違います。ブックレット(歌詞カード)の紙質や印刷、裏ジャケに刷られた製造情報の書きぶりも、年代を読むヒントになります。細かい話に聞こえるかもしれませんが、この積み重ねで「これは間違いなく初期の一枚だ」と確信が持てるようになります。
盤面の刻印(マトリクス)を見る
いちばんマニアックなのが、ディスク中央の透明なリング部分に刻まれた小さな記号や番号です。これは「マトリクス」と呼ばれ、プレスの版や工場を示すサインだと言われています。コレクターはこの刻印の違いで、同じ品番の中でもさらに早いプレスかどうかを見極めようとします。読み解き方には諸説あり、当店も一つの参考情報として扱っていますが、光にかざしてこの刻印を追う時間は、正直いちばん楽しい瞬間です。
ジャンルで見る初期盤CD人気の傾向
初期盤の人気は、ジャンルによって温度差があります。当店に持ち込まれる品や、コレクターの探し方を見ていると、だいたい次のような傾向があります。あくまで傾向の話で、最後は一枚ごとの状態と内容で決まりますが、目安として読んでみてください。
洋楽ロック
いちばん動きが活発なのが洋楽ロックの初期盤です。名盤とされるアルバムほど、初期プレスと再発で音の印象が違うと語られることが多く、初期の音を求める層が世界中にいます。ビートルズやピンク・フロイド、ツェッペリンあたりの初期CDは、状態と帯次第でしっかり評価が伸びる一群です。海外のコレクターとも競合するジャンルなので、探している人の数がとにかく多い印象です。
ジャズ
ジャズも初期盤が好まれるジャンルです。もともとレコードの世界で「オリジナル盤信仰」が根強い音楽なので、その感覚がCDにも持ち込まれています。名門レーベルの名盤がCD化された初期のプレスは、音の生々しさを理由に探し続けている人がいます。ジャズ好きの方は盤の情報にも詳しいことが多く、品番や帯まできっちり残しておられるケースをよく見かけます。
シティポップ・和モノ
ここ数年で存在感が増したのが、シティポップをはじめとする和モノの初期盤です。海外からの人気が国内に跳ね返ってきて、80年代の邦楽が改めて注目を集めています。CD初期にあたる作品は生産数が読みづらく、初回プレスがなかなか出てこないものもあります。達郎やユーミンといった名前を筆頭に、当時のシティポップ系の初期CDは問い合わせが増えているジャンルです。
状態と付属品で査定額は変わる
どれだけ貴重な初期盤でも、最後にものを言うのは状態です。当店が見ているのは、まずディスクそのもの。盤面に深い傷やレーベル面のはがれがないか、再生に支障が出ないかを確認します。次にジャケットとブックレットの日焼けや折れ、ケースの割れ。そして帯やシール帯、封入されていた応募券やライナーが揃っているか。この「そろい具合」で評価はぐっと変わります。
タバコのヤニや水濡れのシミは、思っている以上に印象を左右します。逆に、無理にクリーニングして帯をはがしたり、ケースを新品に替えたりすると、初期盤ならではの証拠が消えて価値を下げてしまうこともあります。触りすぎず、見つかった状態のまままとめて出していただくのが、いちばん高く評価しやすい形です。判断に迷ったら、そのまま当店にお持ちください。
「幻の一枚」と言われている初期盤CD
この幻の一枚、実は誰もが知っている作品です。ビートルズのアルバム「アビイ・ロード」、メンバーが横断歩道を渡るあのジャケットですね。レコードは1969年に発表され、全世界で約3,000万枚を売り上げました。そして1983年にCDが発売されたのですが、本国の許可を取っていなかったことを理由に、即刻回収されてしまったのです。余談ですが、このCDの音に使われたのは「プロユースシリーズ」という高音質をうたったレコードだったと言われています。ほんの一瞬しか市場に出回らなかったこの「アビイ・ロード」初期盤CDは、その希少性から数万円クラスの評価になることもあり、コレクターが見つけたら即座に確保する一枚として語り継がれています。
初期盤CDの買取と当店の宅配買取
当店はレコード買取専門店ですが、CDやカセットテープも同じ音楽の仲間として買取しています。初期盤かどうかの見極めは細かい作業なので、ご自身で調べ切れなくても大丈夫です。品番も帯も、こちらで一枚ずつ確認します。遠方の方には宅配買取をご用意していて、発送はゆうパックの着払いのみ。送料の負担なくお送りいただけます。段ボールに詰めて送っていただければ、初期盤も再発もまとめて査定します。
当店では毎月期間限定で、レコードの買取金額に20%を上乗せするキャンペーンを実施しています。この「ついで売り」をご利用いただくと、レコード以外の品――CDやカセット、オーディオ機器、楽器なども合算して20%UPの対象になります。せっかくなので、押し入れに眠っている音楽まわりのものは、まとめて出していただくのがお得です。
お手元のレコードの買取価格をお調べなら、レコード買取相場のジャンル別価格表で目安をご確認いただけます。査定はTU-Fieldの無料査定で承ります。
初期盤CDに関するよくある質問
まとめ
今回は初期盤CDについてお話ししてきました。たかが古いCD、されど古いCD。品番や帯、盤面の刻印といった小さなサインの向こうに、その時代の空気と、最初に世に出た音が詰まっています。「聴かなくなったCDを一枚ずつ調べるのは骨が折れる」という方は、その作業ごと当店に預けてください。芸術や音楽を次の世代へ引き継ぐために、レコード買取専門店 TU-Fieldが音楽関連のものを買取しています。ご紹介したCDはもちろん、レコードやオーディオ機器、楽器まで、まとめてご相談ください。ご連絡をお待ちしています。
