今回は、高価買取の国内盤レコードのお話です。洋楽はオリジナル盤のほうが高く売れる傾向にありますが、国内盤でも希少価値の高いものは当然高額での買取となります。
この記事では、数ある高値の国内盤のなかでも、「こんなタイトル(邦題)が付いているレコードが高く売れる」というお話をします。
目次
高価買取の国内盤レコード
ビートルズ「抱きしめたい/こいつ(赤盤)」
- Artist The Beatles
- Title「抱きしめたい/こいつ(赤盤)」(OR1041)
- Price 10,000円
泣く子も黙るビートルズの赤盤シングルです。A面が「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」、B面が「こいつ(This Boy)」です。それぞれの邦題のセンスが半世紀以上古い(当然ですね)のはさておき、こうして「A面/B面」で表記するとなんだかおかしくなります。そんなに「こいつ」が好きなんでしょうか。愛にはいろいろな形がありますね。
邦題の突っ込みどころはこのくらいなので、少し余談を。A面曲「抱きしめたい」はドイツ語バージョンがあるビートルズの曲の1つですが、メンバーはドイツ語版のレコーディングをすっぽかそうとしました。ドイツといえば、デビュー前のビートルズはハンブルクでハードな下積みをしていましたし、なんでスターになってまで媚びを売らんといかんのだ、という感じだったのかもしれませんね。
デヴィッド・ボウイ「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」
- Artist David Bowie
- Title「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」(RCA – 6050)
- Price 20,000円
原題は「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」、デヴィッド・ボウイの名作グラム・ロックアルバムです。タイトルを頭から直訳しただけですがこの衝撃。のちに邦題は『ジギー・スターダスト』に改められました。
このアルバムでボウイは火星からやってきたロックスター「ジギー・スターダスト」を演じており、ライヴツアーもこのキャラクター設定のまま敢行しました。そして1973年7月3日のコンサート会場で突如「ジギー」の引退を宣言したのでした。しかし自分でキャラ設定をつくって世界中を巻き込むなんて、ボウイ様くらいしかできないでしょう。
ストゥージズ「淫力魔人」
- Artist Iggy & The Stooges
- Title「淫力魔人」(SOPL-194)
- Price 30,000円
原題は「Raw Power」。「パンクのゴッドファーザー」と称される怪人イギー・ポップが中心のバンド「ストゥージズ」のアルバムです。ストゥージズはそれまでにエレクトラから2枚のアルバムを発表していましたが、あまりにパンク過ぎる振る舞いが災いし、レコード会社との契約を打ち切られていました。
そこに手を差し伸べたのがデヴィッド・ボウイです。ボウイのコネでコロムビアとのレコーディング契約を取り付けたストゥージズは、これまでの2枚よりも攻撃的な本作「淫力魔人」を制作、再び契約を打ち切られてしまいました。己が道を行くのも楽じゃないですね。
フェルト「微睡みのはてに」
- Artist Felt
- Title「微睡みのはてに」(35510-20)
- Price 1,000円
原題は「Forever Breathes The Lonly Word」。ネオアコ・ギターポップ業界では有名なバンド、フェルトの6枚目のアルバムです。まるで元のタイトルと関係のない邦題ですが、ジャケットのうるんだ瞳の雰囲気とマッチした、良いタイトルです。
このアルバムは、オルガンが大活躍するピーヒャラ演奏に独特の情けないヴォーカルが耳に残ります。オープニング曲のように神話的な情景を歌うものもあれば、「All The People I Like Are Those That Are Dead」のようにタイトルから暗い気持ちにさせてくれる歌もありで、情緒不安定な時にうってつけです。
おまけ こんな邦題もありました
これまでご紹介したように、面白い邦題が付いていて高価で売れるレコードもあれば、面白い邦題が付いているのにお値段がつかないかわいそうなレコードもあります。せっかくなので1枚だけご紹介しましょう。
デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ「女の泪はワザモンだ!!」
- Artist Dexys Midnight Runners
- Title「女の泪はワザモンだ!!」(25PP-74)
バーミンガム出身のデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのセカンド・アルバム「Too-Rye-Ay」の邦題です。原題は最終曲「カモン・アイリーン」にでてくるフレーズですが、意味はよくわかりません。
本作はケルト風味のソウルで、フィドルの音色とヴォーカルの鼻詰まり声が最高です。ちなみにこのバンドはヴォーカルのケヴィン・ローランドのワンマン・バンドですが、このケヴィンという人が実に変人で、アルバムごとにメンバー全員のファッションを変えるということをしていました。バンド解散後もケヴィン氏はファッション改革にいそしみ、90年代には自身の女性下着姿をジャケットにした怪作「マイ・ビューティー」を発表しました。